インフィニットループ 広報ブログ

2025年06月30日 (月)

著者 : r-hagihara

AI支援新卒研修

皆さん、こんにちは!採用担当のhagiです。
今年も、フレッシュな新卒社員が仲間入り!2か月間の新卒研修の様子をお届けします!

Web開発の基礎を学ぶ

研修の最初のステップでは、研修全体で必要となるバックエンドの実装に慣れることを重視しています。具体的には、Linux、Web、Git、Docker、データベース、PHP(Laravel)といった、現代のWebシステム開発に不可欠な技術をハンズオン形式で習得します。座学が終わったら、すぐにグループワークを実施し、学んだ内容を実践的に活用して理解の定着を図っています。

長年継ぎ足した秘伝の教科書

インフィニットループの新卒研修の最大の特徴は、長年継ぎ足し続けてきた秘伝の教科書の存在です。これまで執筆に携わったエンジニアの知恵と経験が詰まった、大切な会社の資産です。

今年はAIを取り入れる形でカリキュラムを刷新し、ハンズオンやグループワークを充実させました。教科書を読んだだけで終わりではなく、社内学習システム(Moodle)を使った理解度チェックや、AIを使って手を動かしながら学ぶ実践的な課題を用意しました。

ソフトウェア設計手法とチーム開発を体験

Web開発の基礎を身につけたら、チーム開発のノウハウを学びます。TDD(テスト駆動開発)、Webフロントエンド、開発計画、ソフトウェア設計、リファクタリング(Tidy First?)といった、チーム開発に焦点を当てた学習を進めます。ここでも再びグループワークを実施し、学んだ概念を実際のコードに落とし込むようにしてもらいました。
Web開発の中でも特にオンラインゲーム開発は仕様の変化が激しいプロジェクトになることが多く、実践的で運用しやすい設計を身につけるためには、小さな変更を丁寧に積み重ねる業務プロセスに慣れることが大切です。
実務と同様のGitHubフローに基づいたPull Request/Review、朝会、振り返りといったプロセスを日常的に体験することで、チーム開発における協調性と効率性のバランスを考えてもらいました。

私は如何にして心配するのをやめてAIと協働するようになったか

今年はLLMを活用した様々なAI エージェントが登場しました。AI エージェント自体が非常に高速な開発サイクルで次々と進化していく様子を見て「やっぱりエンジニアの仕事はなくなっちゃうの!?」という危機感は私にもありました。
一方で実際に業務に使ってみると、単にAIにプログラムを書かせるのみに留まらず、障害対応におけるエラー調査、問題解決の壁打ち、「このコマンドのオプションなんだっけ?」などなど、これまで苦労していた部分の負担が軽減できる部分に魅力を感じています。
調べ物にかける時間が減れば、設計や仕様の検討に注力することができます。
そこで、新卒研修では、ドキュメントの作成やメモの取り方についてもAIを活用するトレーニングを行いました。
具体的には、ネットやLLMで調べたり、先輩から教えてもらった内容は、NotebookLMなどに自分が学んだ内容を蓄積し、チームで共有するようにしてもらいました。こうすることで、自分だけでなくチーム全体でのナレッジベースの価値が高まります。NotebookLMは質問もできるので、少し時間がたって忘れてしまった内容についても曖昧な記憶から調べやすくなっているのが良いと感じました。

AI支援モブプロ

今回、2人チーム&AIエージェントの3者でプロダクト開発を進める形式モブプログラミングを行いました。この課題では、実際にコードを書くのはAIエージェントだけで、人間はAIに指示を出すことに専念するというレギュレーションを設けています。
一般的なモブプログラミングのメリットとして、未知の分野や不確定要素の大きいプロダクトに取り組む際にキャッチアップが楽になる点が挙げられます。若手エンジニアにとって、モブプロ自体もメリットの大きい取り組みと考えていますが、今回はそこにAIを加えてみたところ、いくつか効果的と感じたことがありましたので紹介します。

モブプロで挑戦する課題は、Vibe Codingの効果がわかりやすい課題としてWebブラウザで動作するミニアプリ・ツールを作って統合するという内容にしました。
AIに指示を出す過程で、知らなかったプログラミングの概念や特定の専門知識について、AIからのアウトプットや対話を通じて自然に学べることがわかりました
1週間の短い間でしたが、これからエンジニアとしてキャリアを積むうえで、どうAIと接していくのがよいか、新入社員の皆さんに自分なりに体感してもらいました。

成果物の一部をご紹介します。

応援コメントつきポモドーロタイマー
カラーピッカーによる自動テーマカラー変更(うまくいった例)
(微妙な例)
WebRTCを使ったビデオチャット
QRコードを使った2Dメタバース

新入社員の感想

このモブプロは、成果物とともに社内ブログを書いてAI支援開発の感想を社内で展開してもらいました。実際のワークフローの細かなところまで、つまづきや感動した点なども共有してもらいました。

インフィニットループでは、会社としてのAI活用を促進しており、すでに多くのエンジニアがAIを活用して仕事をしています。AI エージェントはちょうど今年から急速に普及したので、この社内ブログを通じて、全社的なAIへのキャッチアップとしても効果的な知見が得られました。

新入社員のブログから、感想を一部ご紹介します。

「カラーパレット生成ツールを作ることでこれまで感覚的に捉えていた「色」に対して、色彩調和や色空間といった具体的な規則や理論が存在することを学ぶことができた」

「書いてもらったコードが正常に機能しても、ロジックが理解できていないと拡張ができなくなる」

「(テスト自動化は)どうなったら正解かテストシナリオや期待値の記述はやはり人間の仕事が残る」

「AIは文脈を読み取らないし、額面通りのそのままの解釈で受け取ってしまう」

「AIは、自分では気づけなかった視点や発想を提示してくれる」

「AIをうまく使うためには、「自分は何を知りたいのか」を整理し、的確に伝える力が求められる」

「JavaScriptの初期化処理でHTMLを追加したりと、コードの所在が不明瞭な状態に陥りました」

「あ、やめて、そこに手を加えるな… ちょとおまっ、」

「自分の実力以上のものを出されるということなので自分でコードを拡張するイメージが持てませんでした。」

「単純で誤っている事を理解してなく誤りでも回答する」

「曖昧な仕様書から詳細な仕様を練るのはまだ人間の仕事である。」

未知の分野をAIと探索する

ソフトウェアエンジニアリングは、IT技術を応用して探索的・発見的な問題解決を担う仕事です。その仕事の大部分を占めていたコーディングは、いまやAIが担うようになってきています。仕様についても提案してくれるようになり、未知の分野であってもスムーズに開発に取り組めるようになりました。
とはいえ、ビジネスやプロダクトの社会的なニーズを具体化するためには、関係者の認識を合わせて仕様を決定する工程に多大なコストがかかります
私は、若手エンジニアがAIモブプログラミングに取り組む様子から、エンジニアが社会的な存在として、仕様を決めるためのドメイン知識の理解や探索的な問題解決に注力し、社会とAIをつなぐ「仲介者」や「設計者」としての戦略的な立場を担うという可能性を垣間見ることができました。

AIが書いたコードを読んで学ぶ

新卒研修におけるAIの活用方法として、コンピュータサイエンス(CS)の学習サポートを紹介します。
インフィニットループのCSの学習内容としては、アルゴリズムとデータ構造・OS・ネットワークなどの、システム開発の基盤となる低レイヤー技術をメインに扱っています。
今年は、この内容に関して、AI生成コードのコードリーディングを行いました。
メモリ管理の異なるランタイムで計算量オーダーを比較計測したり、通信プロトコルを実際にデバッグしてみることで、教科書で学ぶ知識とは違った視点で仕組みを捉えることを狙っています。
教材では最初のプロンプトだけ提示してあり、学習者はこれをAI エージェントに指示して、エラーが出るコードを生成したら直してもらったり実装のバリエーションや実装箇所で分からないところがあったら質問してプログラムが期待通りに動くようになるまで対話を続けます。
「習うより慣れろ!」をAIのサポートを受けながら実践してもらうのがねらいです。

知らない概念をつかむ新しい方法論

短い研修の間に低レイヤー技術を実際に運用できるようになるのは難しいですが、そもそも、これまで最初の一歩としてこのような分野の学習を実践的に進めるには、低レイヤーを扱う言語へのプログラミングへの慣れが必要でした。
その点、今後は、具体的な用語を知っていれば基礎的なコードをAIに書いてもらうことができ、カジュアルに低レイヤーの要素技術に触れることができるようになりました。
AIと一緒に少しずつコードを変更して発生するエラーに対応していくことにより、デバッグやランタイムにも慣れることができます。
エンジニアリングは幅広い業務知識を対象とした仕事ですが、概念とその名前を知っていれば、それを手掛かりに具体的な情報をAIが教えてくれるようになりました
インフィニットループでは、様々な技術をフルスタックに運用する仕事が多いため、新しい領域に取り組むイテレーション自体を高速化することが重要です。未知の固有名詞に多く接して、その調べ方や類推に慣れることを重視しました。
実際の仕事でも、知らない技術とたくさん出会います。未知の技術に関して、実際に動くプロトタイプを書いて試してコードレビューするという流れは、品質の高いプロダクト開発に欠かせません
AIによって、このプロセスは先輩から教わるだけでなく、自己学習することができるようになりました。AIと対話しながらエンジニアリングの諸概念を具体的に学ぶやり方を身につけていくことが、これからの新しい学習スタイルの一つになるかもしれません。
また、エンジニアの育成も、その自己学習を支援する形に変わっていくでしょう。

チームビルディングを体験する

さて、やはり研修の中でも盛り上がったのはグループワークです!
今年は、インターンシップ教材にもなっているオンラインRPGをベースに、チームで協力して新たな機能を開発するミッションに挑戦しています。
技術スタック: フロントエンドはA-Frame(Three.js)、バックエンドはLaravelとなっており、ブラウザで3Dゲームが作れるスタックにしています。

進め方: まずは、仕様書チームで読み、「この機能はどう実装する?」「ここの挙動はどうあるべき?」といった細かい部分を決めていきます。その後、タスクを分担して各自実装に入ります。

今年の新卒は3D, VRに強い社員と、サーバー・UEに強い社員がいたので、グループワークでは各自の得意分野を生かしつつ、システム開発の全体像をつかめるような課題にチャレンジしてもらいました。

インターンシップのゲームをバージョンアップ!
バトルにQTSシステムを追加!
バトルをWebGL 3Dシューティングに
複雑な仕様のパズル要素にも挑戦!

C/Sモデルを生かしたUnreal Engineへの移植

そして、最後のグループワークでは、このオンラインゲームをUnreal Engineに移植しました
2か月弱という短い期間で学んだ技術で、オンラインゲーム開発に挑戦してもらうハードな課題でしたが、個人の得意分野を生かしてチームで協力しながら、ゲームとして形になるところまで作り上げました。
題材としてはオンラインゲームを扱っていますが、技術検証、フロントエンドとバックエンドの分離に基づく開発体制の構築、APIの策定や仕様の調整・アセットの発注など、システム開発に必要となるエッセンスがたくさんあります。

Unreal Engineを使ったオンラインゲーム製作
シェーダーの作りこみ
サーバーで生成管理するマップを表示する仕組み
負荷試験も体験します
手書きのDTOで通信スキーマを定義します
仕様からデータベースの追加設計を検討します
ゲームのデバッグツールもHTMLでサクッと作ります

開発中には、他のチームと「この部分のデータ連携どうしようか?」といった技術的な詳細について、Slackのハドルで調整しながら進めることもありました。
インフィニットループは北日本に拠点を構えながら、全国各地の企業と日常的にリモートで様々なやり取りを行っています。そんなスタイルの仕事の流れを感じてもらうべく、新卒研修では毎年、仙台と札幌の新卒同士がチャットやテレビ会議をしながら作業しています。
実際の開発の現場さながらの経験を踏まえてチーム配属に向けて準備をするのが、このグループワークの狙いです。

社会人としてのソフトスキルを学ぶ

弊社の研修は内製のソフトスキル研修が非常に充実している点も特徴です。
質問の仕方、情報取り扱いとNDA、インサイダー取引の危険性といった社会人エンジニアとしての基本倫理と法律を学びます。
社内ルールとマナー、ハラスメント防止、健康管理・飲み会の作法といった多岐にわたる項目も網羅し、円滑な業務遂行と快適な職場環境のために必要な知識を身につけました。
他にも、エンジニアとしてのキャリアパスをイメージしてもらうために、弊社の1on1の取り組みの紹介、「既存のコードに敬意を持とう」「テスト文字列に「うんこ」と入れるな」といった多岐にわたる研修で、エンジニアが社会に出るうえで重要なソフトスキルを学びます。

会長が毎年更新している人気の講義

ものづくりの「流れ」を肌で感じる研修

AIやクラウドネイティブなどの周辺技術により、IT業界はシステム開発のスピードが加速しており、小規模で密接に連携したチームが良い成果を出しています。
そんな状況を踏まえつつインフィニットループの新卒研修では、単に個々の技術を磨いていくだけでなく、チームを作って企画から開発・テスト・リリース・運用までの一連の仕事の全体像とその流れを掴むことを重視しています
私は、これからキャリアをスタートする新入社員に対して、研修を通じてチームでの協力の大切さ、コミュニケーションの重要性、そして何よりもものづくりのおもしろさを肌で感じてほしいと思っています。

今後のAI時代においてエンジニアの仕事が大きく変わることはあきらかです。ただ、新卒研修を通じて、私は、AIによってこれまでにないスピードでものづくりができるようになった世代の突破力を感じました。彼らが活躍する場面はこれまで以上に広がる可能性が大きいように思いました

研修を終えた新卒の皆さんが、インフィニットループの一員として、個性と才能を活かして活躍してくれることを、心から楽しみにしています!

インフィニットループでは新しい仲間を求めています

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