インフィニットループ 技術ブログ

2023年02月14日 (火)

著者 : s-igarashi

今年度も PHP Foundation に寄付をしました

こんにちは、仙台支社のいがらしです。インフィニットループは今年度も会社として、The PHP Foundation に前年度と同額の寄付をしました。アイコンのテンションがやたらとアゲアゲになっているのは、実際に支払いの手続きをした弊社のえらい人の犯行みたいです。いいぞもっとやれ。

TL;DR

この記事では以下について述べています。

  • The PHP Foundation は PHP そのものの開発を支援する団体です
  • 弊社を含め、日本でも何社もの企業が支援を行っています
  • PHP の存続と発展のため、みなさんの会社でもぜひ寄付を検討してみてください

今回の寄付について

前回寄付時からの繰り返しとなりますが、弊社インフィニットループはかねてより PHP を業務で使用してきており、PHP の言語としての発展と継続にその利益をある程度依存しています。道義的な側面でもある種の投資的な側面でも、コミュニティに対して何らかの還元を行うべき立場です。

もともと前回寄付の時点で、「今回だけの単発の寄付ではそこまで意味がないので、継続的にやっていきましょう」という話で経営層と合意はとれていました。今年度についての話をどう出そうかなー、とぼんやり考えておりましたら、経営層の方から「そういえば PHP の寄付、前回の時期からするとそろそろじゃないの(訳: はやく稟議をあげろ)」と声かけがあり、今回再度の寄付となった次第です。

これもまた前回寄付時からの繰り返しとなりますが、弊社一社の支援だけではそこまで大きな意義はありません。PHP によって利益を得ている多くの同業他社が同様に、あるいはそれ以上の寄付を行い、できるだけ多くの額が集まってくれればとよいと考えています。PHP が言語として持続的に発展していけば、我々は今も日々に行っている仕事と地続きの形で、より良い仕事を続けていくことができます。働く場所やプロジェクトが違っていても、あるいはビジネス・人材獲得市場における競争関係にあるとしても、この PHP に依存しているという点で我々は利害を共有しています。

前回寄付の記事を公開して以降、PHP を利用する多くの企業が The PHP Foundation への寄付に名乗りをあげてくれました。表立って IL ブログの記事へのリンクを添え、内容へ賛同の意を表明してくれた企業さえ何社かあります。この業界で PHP を使い日々の稼ぎを得ているプログラマーの一人として、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

The PHP Foundation とは

あらためて説明しますと、The PHP Foundation は PHP そのものの開発を支援する団体です。設立経緯の詳細は前回寄付時に解説しましたので、今回はあらためて概説と現在の状況をお伝えします。

PHP はコミュニティによって開発されているオープンソースの言語で、言語仕様の改訂や処理系の開発には世界中の多くの人々が関わっています。処理系のソースコードは GitHub の php/php-src というプロジェクトでホストされています。

言語をどのように実装していくかにはコミュニティでの合意形成が必要で、これは RFC の作成とそれについての議論と投票、開発者 ML や GitHub のコメント上での対話といった形で行われています。つまり誰でも参加可能なオープンな体制で言語の開発が進められていて、たとえば昨年 12 月にリリースされた PHP 8.2 には、筆者がプライベートの時間で RFC を書いて実装を PR した機能(trait での定数定義)も含まれています。

しかし、このコミュニティでの合意形成や実装には多大な時間が必要です。そして処理系の実装には新機能を実装していくばかりではなく、バグ修正やリファクタリングといった作業も必要です。開発に参加する人々の大部分は仕事や学業といった本業を別に持っていて、それぞれの余暇からこの対応時間を捻出するのは簡単ではありません。

The PHP Foundation は寄付をつのって PHP のコア開発者へ資金提供を行い、開発者がフルタイム・パートタイムで日中の仕事として PHP の開発へ取り組むことを支援しています。2021 年 11 月の設立後に多くの寄付を集めて(現在の総調達額は約 785,000 USD)、同年 12 月にかけての公募へ応じた約 100 人の中から実績ある 6 人を選び、2022 年 4 月よりパートタイムの開発者として契約しています。昨年 11 月の “Impact and Transparency Report 2022”(『2022 年の影響と透明性に関するレポート』)によると、2022 年 4 月から 11 月の間で 1568 コミット中の 683 コミット834 のレビューのうちの 283 が、この 6 人により行われました。多くの不具合修正や機能開発が行われており、PHP 8.2 が現在の形で無事リリースされたのは、彼らと彼らへ資金提供をした The PHP Foundation の確かな成果と言えます。なお 11 月の時点での開発者への総支払額は 133,285 USD です(当初はもう 1 人、フルタイムで雇う最高評価の開発者を選定して予算が組まれていたのですが、その 1 人が事情あって不参加となり支出が大幅に減ったようです)。

前回寄付時の記事でお伝えした通り、The PHP Foundation は有力なコア開発者である Nikita Popov さんが PHP 開発の第一線から退くことを契機に作られた団体です。2021 年 4 月 1 日から 11 月 1 日にかけての Nikita さんのコミット数は 820 でした。コミット数は開発者の活動量をはかる指標の一つでしかありませんが、彼の抜けた穴を埋めるという当初の設立目的の一つをある程度まで果たせていそうです。

2023 年の活動について、The PHP Foundation は約 600,000 USD 程度を開発者へ支払う予算として確保しています。現在のパートタイム開発者の活動時間を(人によってはフルタイムにするなど)拡大し、総活動時間をこれまでよりも倍増させる予定です。より多くの寄付が集まれば、更に追加の開発者を雇う可能性もあるとされていますし、何にせよ今後 PHP の開発はよりいっそう加速していくことでしょう。

The PHP Foundation による PHP 開発に関連した活動内容は、公式サイトのブログにある PHP Core Roundup にて、その他の開発者による活動とともにおおむね毎月のペースで報告されています。PHP 処理系の開発動向を知りたい場合は確認するとよいでしょう。

日本からの寄付

先述の通り、日本からも多くの企業が The PHP Foundation への寄付を行っています。寄付について各企業からの公式のアナウンスがあったものについてはそのページへ、その企業の方がブログ記事や twitter での投稿をされている場合はそちらへ、それも見つからなければ OpenCollective の企業ページへのリンクを添えつつ、以下へ見つけた範囲で挙げていきます(五十音順)。

現在日本からと思われる寄付総額は企業・個人を含め、少なく見積もっても 120,000 USD を越えているようです。半年ほどの間での The PHP Foundation の支払額が 133,285 USD で、これはフルタイム開発者 2 人分近くに相当したようですので、おおむね 1 人年分程度の活動費用が日本から集まったと考えてよいでしょう。これまで The PHP Foundation へ寄付をしてくださったすべての方へ、重ね重ね御礼申し上げます。また月額や年額での定期的な支払いを設定された方もそうでない方も、今後もできる限りの支援をご継続いただけるなら、それは本当にすばらしいことです。

前回寄付時の記事に書いたのとほぼ同じことを繰り返します。

Web の約 8 割を支えると言われる PHP、その PHP によって利益を得ている多くの企業のごく一部が、その利益のごく一部を PHP へ還元すれば、より持続的に、より速い言語の発展が得られます。企業として自社の使う言語を支援し、かつ他社にも同様の支援を呼び掛けていくことには、一定の事業上の合理性があり得ます。

支援を必要とするプロジェクトは世界にいくらでもあり、各社の予算は有限です。どこにどうお金を使うべきかは、各社それぞれに判断基準があることでしょう。しかし、我々は PHP によってすでに多くの利益を得ていて、その PHP が我々の助けなしに持続的な発展と存続をしていくことは不可能です。

もしあなたが企業に所属していて、所属先の予算配分に裁量を持つ立場にあるなら、どんな対応が最も自社の利益に即したものとなるかを少しだけ考えてみてください。もしその立場にないとしても、もし現状の自社の対応に問題を感じるようであれば、裁量を持っている人を動かす方法がないかを、少しだけ考えてみてください。

おわりに

昨年試しに PHP の小さな機能追加へ個人的に関わってみて、個人の時間だけでより大きな関わりをするのはかなり難しそうだというのを実感として学びました。ただ弊社で身に着けたテスト駆動での開発や大規模コードとの付き合い方といった経験は、技術的な部分でかなり役に立ったように思います。「PHP に寄付したいんですけど」「おお、いいですね、やりましょう」的な異様な話の早さなどを見ても、仙台や札幌で PHP を使う開発者にとってインフィニットループは大変良い環境なのではないかと思います(唐突な求職者向けアピール)。

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